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【書評】ロスト・シンボル-ダン・ブラウン
- 2010-04-22 (木)
- 小説
著者:ダン・ブラウン
出版社:角川書店( 2010-03-03 )
価格:¥ 1,890
ハードカバー ( 351 ページ )
ISBN-10 : 4047916234
ISBN-13 : 9784047916234
著者:ダン・ブラウン
出版社:角川書店( 2010-03-03 )
価格:¥ 1,890
ハードカバー ( 356 ページ )
ISBN-10 : 4047916242
ISBN-13 : 9784047916241
ワシントンポスト紙に「まさにブラウン運動だ」と言わせたダン・ブラウンのラングドン教授シリーズの第三弾。
今回のテーマは、キリストの聖杯伝説、宗教と科学の対立に続いて、秘密結社フリーメイソンだ。
上下巻ではあるが、実際の内容は12時間程度の半日を描いており、ドラマ24のような分刻みの場面変更が読者を魅了する。
小説としては、いつも通りのスピード感と事実に立脚されていると思わせるような背景は楽しめた。しかし、聖杯伝説と違って、日本人には馴染みがない(と思われる)舞台が多く、なかなかイマジネーションを働かせて読み進めるのは難しいという印象。米国議会図書館の地下なんて、まったくイメージつかない。
なので、いくつか気になった点を調べた結果け紹介。書評とは言えず。
フリーメイソンの起源
(1)中世石工職人組合(ギルド)起源説
中世におけるキリスト教の大聖堂、修道院、宮殿などの建築や修復は、長期間にわたることが多く、その作業は親方(マスター)の指揮のもとで、建築家や職人のギルドによってなされた。ギルドの職人たちの集会所は「ロッジ」と呼ばれ、作業に必要な書類の保管場所であるとともに、職業上の秘密を伝達する儀礼の場としても使用された。フリーメイソンは、この中世の石工職人組合(ギルド)に起源を持つという説である。多くのフリーメイソン史の研究者がこの説を支持している。「ロッジ」という言葉は、13世紀頃登場し、「フリーメイソン」という言葉は14世紀頃から使われるようになる。
(2)聖堂(テンプル)騎士団起源説
聖堂(テンプル)騎士団は、1118年聖地エルサレムへ向かう巡礼者の保護を目的として結成され、貴族だけでなくさまざまな階層からなる巨大な組織に発展し、貿易・金融業等で莫大な富と権力を有するようになった。しかし14世紀の初め、その資産を狙ったフランス王フィリップ4世の陰謀により壊滅状態に追い込まれ、残党はスコットランドに逃れた。この残党(騎士)が再編した組織がフリーメイソンの起源であるという説である。この説は、フリーメイソンに貴族性を求めようとする人々によって支持されることとなった。
(3)「ソロモン神殿」建築家起源説
「ソロモン神殿」は、紀元前にエルサレムに存在したユダヤ教の礼拝の中心地で、古代ユダヤ民族の統合を象徴している。建築にあたり建築家棟梁ヒラム・アビフが、職人たちを「親方」「職人」「徒弟」に組織し、それぞれに秘密の合言葉や符丁などを用いさせるなどの工夫をして、完成させた。フリーメイソンは、このとき組織された職人集団を起源とするという説である。この説はフリーメイソン自身が主張している。
キャサリン・ソロモン博士の魂の重み実験
ダンカン・マクドゥーガル(Duncan MacDougall、-1920年)による実験がある。
人の患者と15匹の犬を使い、死ぬ時の体重の変化を記録しようと試みた。その結果、人間は死の際に、呼気に含まれる水分や汗の蒸発とは異なる何らかの重量を失うが、犬ではそういった重量の損失が起こらなかった、と報告した。
純粋知性科学について
学問領域としては、意識や思考には質量があることを証明する分野。
前2作と比較すると、特に日本人からすると馴染みの薄い主題ではないでしょうか。展開のスピード感は衰えていませんが、シリーズ含めて謎解きの構図は一緒。
米国建造物の歴史を学んで再度読むべき一冊。
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【書評】カッコウの卵は誰のもの-東野圭吾
- 2010-02-01 (月)
- 小説
著者:東野 圭吾
出版社:光文社( 2010-01-20 )
価格:¥ 1,680
単行本 ( 357 ページ )
ISBN-10 : 4334926940
ISBN-13 : 9784334926946
量産作家の東野圭吾氏の2010年初の単行本。
北海道や新潟のスキー場及びその周辺を舞台とし、スキー選手の親子を中心とした3家族による殺人犯探しのサスペンス。親子の絆とは何だろう、考えさせられる。捕らわれてはいけないと。
スキーの元日本代表・緋田には娘・風美がおり同じくスキーでオリンピックを目指す。当然血のつながった親子なら、運動能力の高さは継承するのではないか?という着眼から、遺伝子レベルからスターを発掘しようという遺伝子研究を行う研究所がその親子に近づく。しかし、緋田の妻は風美が2歳になる前に自殺しており、しかも流産していた。では、風美は誰の子なのだ?
そんなとき、風美の父親であろう人間が緋田にアプローチをしかける。その意図は分からない。娘を取り戻すためなのか。あるいは・・。
父親と娘の絆には、血のつながりに勝るとも劣らない愛情が溢れている。カッコウは託卵という習慣があり、カッコウの卵は誰のものというタイトルから血のつながっていない親子の物語であるのは容易に想像がつく。
しかし、著者はそのような想像は折込ずみで展開する。本当の親は誰なんだ?という疑問ばかりに集中してしまったが、実はそれは著者の意図だ。本当の親を探しているうちに、伏線は縦横無尽に張り巡らされていた。
気づけば、最後の意外な終着点。
親が子を思うこと、子が親を思うこと。そして何をしてあげることが幸せなのか。
3つの親子のそれぞれの結末は、意外であり、そして感動である。
親子は「血」によってのみ決まるという半ば当たり前のことに捕らわれると、視野はあまりにも狭いことに気づかされる。
いつか娘が生まれたら、もう一度読みたい親子愛が溢れる一冊。
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【書評】OUT(上・下)-桐野 夏生
著者:桐野 夏生
出版社:講談社( 2002-06-14 )
価格:¥ 700
文庫 ( 456 ページ )
ISBN-10 : 4062734478
ISBN-13 : 9784062734479
著者:桐野 夏生
出版社:講談社( 2002-06-14 )
価格:¥ 650
文庫 ( 352 ページ )
ISBN-10 : 4062734486
ISBN-13 : 9784062734486
1998年度版 このミス 1位
1997文春ベスト10 2位
文春二十世紀傑作ミステリーベスト10 国内部門 18位
日本推理作家協会賞
エドガー賞最優秀長編賞にノミネート
10年前に登場した本書は、今なお色褪せることなく犯罪小説の金字塔と言えるのではないか。作者の代表作となった本書は、どこにでもいる主婦達が引き起こす不可解な殺人事件とその凄惨な事後処理の物語だ。
主婦が旦那を殺し、その旦那を解体するパート仲間の主婦達。彼女達は環境は違えど閉塞感という感情のもとに集まっている。彼女達は、金の亡者と化し解体を生業としてはじめた。そんな中、旦那殺害の容疑をかけられた賭博場・バーのオーナーが真犯人探しへと動き出す。動機は単純、復讐だ。そこから真犯人主婦、パート仲間の解体ビジネス、追いかけるバーオーナー達の複雑な数日間が始まる。
読み出したらとまらない、いや斜め読みして飛ばしてしまいたいくらいの衝撃を受ける。
主人公達は、どこにでもいる主婦だ。そしてどこにでもある夫婦間の感情から妻が夫を殺すという殺人事件が起こる。
そこから犯人探しが始まるわけでも、動機探しが始まるわけでもなく、主婦仲間による死体解体が仲間の家の風呂場で始まるのだった。
なぜ?なぜ他人の旦那の死体を解剖するのか?
金なのか、仲間意識なのか、90年代後半の日本の閉塞感は作品にも如実に表れており、まさにその閉塞感からの脱却が彼女達を死体解体マシーンへと変身させたのだ。
それにしても、一貫してダーク。それ以外の色はない。どんな物が登場しようとも、作品に流れる色はダーク。
閉塞感、憎しみ、妬み、堕落、疲労感、全てが交じり合って限りなく黒に近いダーク。
心の醜さ、そして現実から逃げたくて逃げたくて、もがき苦しむ人間の姿はきっとこうなんだろうと思える。
彼女達が自ら望んだ行動なんて、どこにも無いのではないだろうか。姑の介護に疲れきり、娘にはタンス預金を奪われたパート仲間に師匠と呼ばれる主婦、旦那とは完全マンネリ化し、息子は引きこもりの元信金OL主婦、見栄っ張りで車や洋服のために借金に借金を重ねる自転車操業の主婦、みんな最初は良かった。いつからか、人生の歯車がおかしくなっている。しかも自分だけのせいじゃないと、そう思ってる。だから、人を殺しても、人を解体しても、前を向ける。太陽の下に生きていられる。
きっと今、同じ題材にしても出てくる主婦の閉塞感や挫折感は同じなんだろうなと思う。
人間が本質的に、そこに落ちるとき、こうなるんだなと思う。
これを読んで、すっきりすることなんて何ひとつない。
完全に闇だが、彼女・彼らの行動を完全に否定できないと思ってしまう一冊。
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【書評】ダブルジョーカー-柳広司
- 2010-01-15 (金)
- 小説
著者:柳 広司
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-08-25 )
価格:¥ 1,575
単行本 ( 257 ページ )
ISBN-10 : 4048739603
ISBN-13 : 9784048739603
『ジョーカー・ゲーム』シリーズの第2弾である。
今回も結城中佐率いるスパイ組織「D機関」が主軸にあり、今回はライバル組織「風機関」との熾烈な争いが繰り広げられる。
構成は前回と同様、D機関の活動が短編集にまとめられている。
D機関は地方人と呼ばれる陸軍大学出身者以外で構成された諜報機関であるが、今回登場するのが風機関と呼ばれる陸軍大学上がりの精鋭部隊である。
「殺すこと」「殺されること」を忌み嫌う諜報組織D機関に対して、「殺せ」「自ら死すべし」を美とする陸軍出身の風機関は、真っ向から理念を異にする。
しかし、いずれ劣らぬ諜報機関であることは疑う余地も無く、諜報機関にスペアはいらないという諜報機関同士の食うか食われるかの熾烈な争いが最も面白いストーリだ。
両機関には、同じ目的を果たす組織として共通項は多い。1人の統括者と諜報員複数名、そして諜報活動に必要であろう知識、技術、耐性は全て互角ともいえる。
その意味で、諜報機関としての組織力は1人の統括者に拠る部分が多い。結城中佐なのか、あるいは風機関の風戸なのかその人間性が組織にうまく表現されている。
その2つの機関が、同じ事件でダブルブッキングしてしまう、いやダブルブッキングされていた。諜報機関は1つしか要らない、この事件で負けた組織が解体され、ダブルジョーカーとうい状況にはなりえない。
読者含め、先の先まで読みきれるかがカギとなる。
結城中佐が、魔王と呼ばれる所以がついに明かされる点も本作の醍醐味であろう。
恐らく大半の読者がそうであろうが、前作から読んでいれば間違いなく結城中佐ファンになってしまう。
どれだけ風機関が優秀であろうとも、きっと結城中佐が勝つだろうと、生き残るのはD機関だろうとついつい思い込んでしまう。これを安心感として片付けるか、手に汗握る息苦しさに欠けるというかは、読者次第。
本作品の読み方としては、「疑ってはいけない」に限る。
荒唐無稽な点もある、そんなにうまくいくのかい?と思う点もある、しかしそれを差し引いても読み応えがある本だ。
細かいところは気にせず、まずは鵜呑みにして読みすすめることを、お勧めする。
草食男子とはほど遠い、ハードボイルドな男に憧れる人にはお勧めの一冊。
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【書評】ジョーカー・ゲーム-柳広司
- 2010-01-05 (火)
- 小説
著者:柳 広司
出版社:角川グループパブリッシング( 2008-08-29 )
価格:¥ 1,575
単行本 ( 252 ページ )
ISBN-10 : 4048738518
ISBN-13 : 9784048738514
柳広司氏の著作は初めてである。歴史上の偉人を取り扱うミステリーをよく書いているそうであるが、本作『ジョーカー・ゲーム』はオリジナルの登場人物による作品。
基本構成は、短編集である。
結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”で繰り広げられるスパイ活動を背景としたミステリー小説。
登場人物は魅力的であって、中でも結城中佐は異色である。訓練生には魔王と呼ばれ頭脳明晰、しわひとつない白い手袋と杖をついた風貌からはいかにもである。
彼のモットーは「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人や自死は最悪の選択肢」であるという戦時中の軍人魂を真っ向から否定する。とはいえ、あくまでもスパイとしての規律であるから、軍人は軍人魂を持つことに異論はないだろうが。
さて、この結城中佐を中心とするD機関で繰り広げられるスパイ活動が短編の格になる。現場で活動するスパイの人物描写は存在しない、スパイという職業から名前も出身も経歴が全て隠されているからである。それでも、頭脳明晰の帝大出身スパイを際立たせているのが軍人上がりの佐久間の人間味。
戦時中ということで、ストーリーの背景が難しい?と思いきや特に歴史観を持たずとも楽しめる小説である。
スパイという日常生活とはかけ離れた世界とはいえ、007のような映画を想像すればきれいに当てはまる。そんな世界を描いている。
結城中佐の頭脳明晰ぶりは、随所に見られそこは見所のひとつではある。
ただ抑揚のないストーリー展開に飽きてしまいそうになるが、短編でよかったと思う。
2009本屋大賞第3位
このミステリーがスゴイ!第2位
第62回日本推理作家協会賞受賞!
まどわされてはいけない。
年始一冊目にしては、ハードボイルドな一冊。
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【書評】プリズン・トリック-遠藤 武文
- 2009-09-28 (月)
- 小説
著者:遠藤 武文
出版社:講談社( 2009-08-07 )
価格:¥ 1,680
単行本 ( 328 ページ )
ISBN-10 : 4062157063
ISBN-13 : 9784062157063
第55回江戸川乱歩賞受賞作、原題は『39条の過失』である。
交通事故による刑事事件の厳罰化という今日のトピックスを取り上げており、また刑務所での完全密室殺人という限りなく不可能な挑戦にチャレンジしている点は高評価。
ただ減点せざるを得ないのが、作品の構成である。
まず、視点の移動があまりにも多く無駄な登場人物にもスポットが当たりすぎている。誰が主人公で、誰が脇役なのかがわからないまま最後を迎えてしまう。
刑務所内という一般人の知らない世界を描いているということで、描写は丁寧であるがそれでもどうも舞台がイメージしづらい。
それでも江戸川乱歩賞受賞作として君臨したのは、著者のデビュー作にしてここまで大きなテーマに取り組んだという気骨のある著作だからだろう。
原題の39条とは日本国憲法39条を指し、一事不再理についての規定であり、本書の大きなテーマでもある。
交通事故の被害者と加害者、そして加害者の親族が登場するのだが、加害者の遺族が加害者と絶縁する。その理由を知ったときは鳥肌が立つほどの鮮烈である。
全体を通じて、粗さが目立ち何度も立ち往生してしまいそうになるが、ここはひとつ最後まで読み通してもらいたい。
なぜ江戸川乱歩賞の選考委員がこの作品を選んだのか、うっすらと分かる気がする作品である。
「志の高さ」が文字に滲み出るような、男らしい一冊。
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【書評】新参者-東野圭吾
- 2009-09-22 (火)
- 小説
著者:東野 圭吾
出版社:講談社( 2009-09-18 )
価格:¥ 1,680
単行本 ( 354 ページ )
ISBN-10 : 4062157713
ISBN-13 : 9784062157711
『卒業』『悪意』『赤い指』等に登場する加賀恭一郎警部補の鋭い洞察力が冴え渡る東野圭吾著、加賀シリーズの最新作だ。
本書は、ひとつの事件を複数の関係者の視点で取り上げた短編集だ。
初出は『小説現代』2004年8月号に始まり、2009年7月号まで続いている。丸5年かかっている。中には1年のブランクもある期間もある。それでも物語が読まれ続けていたのは1話の完成度の高さの表れだろう。
日本橋・人形町・浜町といった都内でも下町情緒溢れる街を舞台とした殺人事件。真犯人を探すことが目的であるが、そんなことはどうでもいいと思わせてしまうような人間味溢れる関係者達のエピソード。
嫁姑問題を抱える家族、溝を埋めたい夫婦のとった悪戯、祖母の真相を知る家族ともう一人の他人、新参者の加賀恭一郎がそんな人間模様を炙り出してくれる。まるで殺人事件とは別物語なのだと錯覚してしまう。
だが、それは伏線であった。最後にはやはり殺人事件の謎解きが始まるのが著者らしい。
著者が描きたかったのは、「人情」ではないだろうか。ひとつの殺人事件という殺伐とした事実は、スタンドアローンで起きているわけではない。その被害者、加害者、関係者がいる。その彼らには小さくても人情味溢れる物語があり、それが線となり最後には繋がっている。
各話にはそれぞれ新たな登場人物がおり出来事も違うため、なかなか感情移入する余地はない。しかし各話を読み終えたあと、その登場人物が誰であろうと関係のない新鮮で心地よい感情が芽生えるのはなぜだろう。
加賀も被害者も新参者だった。でも、彼らを暖かく迎えてくれた街。
暗い殺人事件と同時並行の人情物語。
短編集でありながらも、最後は紡がれる。
殺人事件なのにどうも心が温まってしまう一冊。
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【書評】パラドックス13-東野圭吾
- 2009-08-11 (火)
- 小説
著者:東野 圭吾
出版社:毎日新聞社( 2009-04-15 )
価格:¥ 1,785
ハードカバー ( 480 ページ )
ISBN-10 : 4620107395
ISBN-13 : 9784620107394
海外ドラマ「LOST」を思い出させるような東京を舞台としたパニックサバイバル小説。
13時13分からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われ、何が起こるかは数学的に予測不可能だという。この想像を絶する中で10数人の登場人物が挫折・絶望を味わいながらも生きる意味を問う。
エンジニア出身の東野氏だけあって、もろ理系の硬い小説かと思いきやどちらかというとパニック&サバイバル&ヒューマンドラマチックな小説。
P-13現象に襲われた東京が舞台で、背景設計は海外ドラマ「LOST」!?と思わせるような「登場人物以外はいない世界」「破壊的世界からの脱出劇」「破滅と脱出の繰り返し」といったキーワードに沿って物語りは進んでいく。
登場人物は、警察官兄弟の兄をリーダーとして、看護婦、やくざ、技師、子育て中の母、女子高生、老夫婦などまるで世界の縮図のような配置。
彼らが織り成すメッセージは、「人間の究極の選択」「善悪の価値基準の崩壊」
このP-13現象の中では誰かの生存は、誰かの犠牲のうえにしかなし得ないという。
このとき、殺人さえもが善として新しい価値基準を作り上げてしまう。
そして彼らは「絶望」と「危機回避」の中で、常に極限の選択を迫られながら生き延びる。
日々、のらりくらりと生活している我々は、手に汗握りながら本書のページをめくることになるだろう。
本書は、数学的に予測不可能なP-13現象という科学的現象が起こるが、あくまで人間の極限や善悪の価値基準を剥き出しにするための方法であって、主題はその後のヒューマンドラマにある。
「数学的」という文句に惹きつけられた読者にとっては肩透かしに思われるかもしれないが、究極の状態で人間がどのような判断を下すのか、そしてそれが合理的なのか、正しいのか、善なのか。夏バテ気味の時期に背筋を伸ばす一冊。
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【書評】流星の絆-東野圭吾
- 2009-08-07 (金)
- 小説

流星の絆
両親を殺された三兄妹が、大人になって復讐をする。しかし、それを阻むのは復讐すべき相手への妹の恋心だったという話。
ストーリー自体は、若干の無理やり感があるにせよ読み応えがある。
展開のテンポや、伏線の張り方などさすがといえる東野圭吾ワールドがそこにある。
しかし、三兄妹だから「絆」で結ばれているという暗黙の了解のような前提があり、なかなか共感できない読者はいるのではないだろうか?親を殺され、養護施設で過ごす日々をより緻密に描写してもらい、「絆」が生まれるプロセスを読者が共感できれば、より面白い。
例えば、『容疑者Xの献身』や『白夜行』に比べると、粗い気がする。
まるで、テレビドラマ化されるのを前提として、テレビか原作を足して100点取れれば御の字のような粗さ。
著者は
「この小説は私が書いたのではない。登場人物たちが作りだしたのだ。」
といっているが、この登場人物の内面的描写が決定的に欠けていると思う。
なぜ登場人物たちは、復讐するに至ったのか。両親を殺され耐えがたい苦痛を味わい3人でしかその憎悪を封じ込められず、果たすべきは復讐あるのみと、そこに至りその感情を抱き続けてきた。その内面の感情をよりページを割いて表現してもらいたかった。
とはいえ、最後まで読ませてしまうのが東野作品。粗さが目立つとはいえ、むしろそこで立ち止まらせないストーリー展開と文章力には脱帽する。
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【書評】告白-湊かなえ
- 2009-08-06 (木)
- 小説
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