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小説 Archive
ゴールデンスランバー – 伊坂 幸太郎
- 2011-07-23 (土)
- 小説
著者:伊坂 幸太郎
出版社:新潮社( 2007-11-29 )
価格:¥ 1,680
ハードカバー ( 503 ページ )
ISBN-10 : 4104596035
ISBN-13 : 9784104596034
今更という感じですが、人生初の井坂幸太郎の著作を読んだ。
よく言われる井坂節や井坂エッセンスは2冊目以降で味わうとして、小説としての構成は流れが流暢というか一定のテンポで、ポイントポイントに置かれる岩山をうまく避けながら進む紙船のように進む。
何か大きなものに追われる逃亡型のサスペンスで、仙台でパレード中の首相が、ラジコンヘリに仕掛けられた爆弾で暗殺される。友人から容疑者にアメリカのケネディ大統領を殺害したとされるオズワルドのように冤罪を着せられていると警告が発せられる。第一部「事件のはじまり」、第二部「事件の視聴者」は、テレビで暗殺事件の報道を見ている視聴者たちの視点。第三部「事件から二十年後」は、事件のその後を語る、ノンフィクションライターの視点。
後半に出てくる、容疑者青柳と元カノの切れ端での文通は、本書の最も重要なメッセージ
「俺は犯人じゃない。青柳雅春」
「だと思った。」
この2つの会話で、この小説は語れる。
監視社会への警告、親子の絆、どうやら人間が本来的に守ろうとする防衛本能というものはあるらしいが、もし何か大切なものを守ろうとするとき、親子間、友人間、恋人間、その間にある防衛力を見事に書ききった小説ではなかろうか。
容疑者の父親は、執拗に追い回すマスコミに対し、はっきりといった。
名乗らない、正義の味方のおまえたち、本当に雅春が犯人だと信じているのなら、賭けてみろ。金じゃねえぞ、何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。おまえたちは今、それだけのことをやっているんだ。俺たちの人生を、勢いだけで潰す気だ。
犯罪は、自分だけでなく自分の家族まで加害者ファミリーとして仲間入りさせてしまうのであって、1つの犯罪は連鎖的に負を産み出す。それを理解したうえで犯行に及ぶべきだと、誰かが言ったのを思い出した。
井坂ファンになる理由がよくわかる一冊。
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【書評】ロスト・シンボル-ダン・ブラウン
- 2010-04-22 (木)
- 小説
著者:ダン・ブラウン
出版社:角川書店( 2010-03-03 )
ハードカバー ( 351 ページ )
ISBN-10 : 4047916234
ISBN-13 : 9784047916234
著者:ダン・ブラウン
出版社:角川書店( 2010-03-03 )
ハードカバー ( 356 ページ )
ISBN-10 : 4047916242
ISBN-13 : 9784047916241
ワシントンポスト紙に「まさにブラウン運動だ」と言わせたダン・ブラウンのラングドン教授シリーズの第三弾。
今回のテーマは、キリストの聖杯伝説、宗教と科学の対立に続いて、秘密結社フリーメイソンだ。
上下巻ではあるが、実際の内容は12時間程度の半日を描いており、ドラマ24のような分刻みの場面変更が読者を魅了する。
小説としては、いつも通りのスピード感と事実に立脚されていると思わせるような背景は楽しめた。しかし、聖杯伝説と違って、日本人には馴染みがない(と思われる)舞台が多く、なかなかイマジネーションを働かせて読み進めるのは難しいという印象。米国議会図書館の地下なんて、まったくイメージつかない。
なので、いくつか気になった点を調べた結果け紹介。書評とは言えず。
フリーメイソンの起源
(1)中世石工職人組合(ギルド)起源説
中世におけるキリスト教の大聖堂、修道院、宮殿などの建築や修復は、長期間にわたることが多く、その作業は親方(マスター)の指揮のもとで、建築家や職人のギルドによってなされた。ギルドの職人たちの集会所は「ロッジ」と呼ばれ、作業に必要な書類の保管場所であるとともに、職業上の秘密を伝達する儀礼の場としても使用された。フリーメイソンは、この中世の石工職人組合(ギルド)に起源を持つという説である。多くのフリーメイソン史の研究者がこの説を支持している。「ロッジ」という言葉は、13世紀頃登場し、「フリーメイソン」という言葉は14世紀頃から使われるようになる。
(2)聖堂(テンプル)騎士団起源説
聖堂(テンプル)騎士団は、1118年聖地エルサレムへ向かう巡礼者の保護を目的として結成され、貴族だけでなくさまざまな階層からなる巨大な組織に発展し、貿易・金融業等で莫大な富と権力を有するようになった。しかし14世紀の初め、その資産を狙ったフランス王フィリップ4世の陰謀により壊滅状態に追い込まれ、残党はスコットランドに逃れた。この残党(騎士)が再編した組織がフリーメイソンの起源であるという説である。この説は、フリーメイソンに貴族性を求めようとする人々によって支持されることとなった。
(3)「ソロモン神殿」建築家起源説
「ソロモン神殿」は、紀元前にエルサレムに存在したユダヤ教の礼拝の中心地で、古代ユダヤ民族の統合を象徴している。建築にあたり建築家棟梁ヒラム・アビフが、職人たちを「親方」「職人」「徒弟」に組織し、それぞれに秘密の合言葉や符丁などを用いさせるなどの工夫をして、完成させた。フリーメイソンは、このとき組織された職人集団を起源とするという説である。この説はフリーメイソン自身が主張している。
キャサリン・ソロモン博士の魂の重み実験
ダンカン・マクドゥーガル(Duncan MacDougall、-1920年)による実験がある。
人の患者と15匹の犬を使い、死ぬ時の体重の変化を記録しようと試みた。その結果、人間は死の際に、呼気に含まれる水分や汗の蒸発とは異なる何らかの重量を失うが、犬ではそういった重量の損失が起こらなかった、と報告した。
純粋知性科学について
学問領域としては、意識や思考には質量があることを証明する分野。
前2作と比較すると、特に日本人からすると馴染みの薄い主題ではないでしょうか。展開のスピード感は衰えていませんが、シリーズ含めて謎解きの構図は一緒。
米国建造物の歴史を学んで再度読むべき一冊。
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【書評】カッコウの卵は誰のもの-東野圭吾
- 2010-02-01 (月)
- 小説
著者:東野 圭吾
出版社:光文社( 2010-01-20 )
価格:¥ 1,680
単行本 ( 357 ページ )
ISBN-10 : 4334926940
ISBN-13 : 9784334926946
量産作家の東野圭吾氏の2010年初の単行本。
北海道や新潟のスキー場及びその周辺を舞台とし、スキー選手の親子を中心とした3家族による殺人犯探しのサスペンス。親子の絆とは何だろう、考えさせられる。捕らわれてはいけないと。
スキーの元日本代表・緋田には娘・風美がおり同じくスキーでオリンピックを目指す。当然血のつながった親子なら、運動能力の高さは継承するのではないか?という着眼から、遺伝子レベルからスターを発掘しようという遺伝子研究を行う研究所がその親子に近づく。しかし、緋田の妻は風美が2歳になる前に自殺しており、しかも流産していた。では、風美は誰の子なのだ?
そんなとき、風美の父親であろう人間が緋田にアプローチをしかける。その意図は分からない。娘を取り戻すためなのか。あるいは・・。
父親と娘の絆には、血のつながりに勝るとも劣らない愛情が溢れている。カッコウは託卵という習慣があり、カッコウの卵は誰のものというタイトルから血のつながっていない親子の物語であるのは容易に想像がつく。
しかし、著者はそのような想像は折込ずみで展開する。本当の親は誰なんだ?という疑問ばかりに集中してしまったが、実はそれは著者の意図だ。本当の親を探しているうちに、伏線は縦横無尽に張り巡らされていた。
気づけば、最後の意外な終着点。
親が子を思うこと、子が親を思うこと。そして何をしてあげることが幸せなのか。
3つの親子のそれぞれの結末は、意外であり、そして感動である。
親子は「血」によってのみ決まるという半ば当たり前のことに捕らわれると、視野はあまりにも狭いことに気づかされる。
いつか娘が生まれたら、もう一度読みたい親子愛が溢れる一冊。
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【書評】OUT(上・下)-桐野 夏生
著者:桐野 夏生
出版社:講談社( 2002-06-14 )
価格:¥ 700
文庫 ( 456 ページ )
ISBN-10 : 4062734478
ISBN-13 : 9784062734479
著者:桐野 夏生
出版社:講談社( 2002-06-14 )
価格:¥ 650
文庫 ( 352 ページ )
ISBN-10 : 4062734486
ISBN-13 : 9784062734486
1998年度版 このミス 1位
1997文春ベスト10 2位
文春二十世紀傑作ミステリーベスト10 国内部門 18位
日本推理作家協会賞
エドガー賞最優秀長編賞にノミネート
10年前に登場した本書は、今なお色褪せることなく犯罪小説の金字塔と言えるのではないか。作者の代表作となった本書は、どこにでもいる主婦達が引き起こす不可解な殺人事件とその凄惨な事後処理の物語だ。
主婦が旦那を殺し、その旦那を解体するパート仲間の主婦達。彼女達は環境は違えど閉塞感という感情のもとに集まっている。彼女達は、金の亡者と化し解体を生業としてはじめた。そんな中、旦那殺害の容疑をかけられた賭博場・バーのオーナーが真犯人探しへと動き出す。動機は単純、復讐だ。そこから真犯人主婦、パート仲間の解体ビジネス、追いかけるバーオーナー達の複雑な数日間が始まる。
読み出したらとまらない、いや斜め読みして飛ばしてしまいたいくらいの衝撃を受ける。
主人公達は、どこにでもいる主婦だ。そしてどこにでもある夫婦間の感情から妻が夫を殺すという殺人事件が起こる。
そこから犯人探しが始まるわけでも、動機探しが始まるわけでもなく、主婦仲間による死体解体が仲間の家の風呂場で始まるのだった。
なぜ?なぜ他人の旦那の死体を解剖するのか?
金なのか、仲間意識なのか、90年代後半の日本の閉塞感は作品にも如実に表れており、まさにその閉塞感からの脱却が彼女達を死体解体マシーンへと変身させたのだ。
それにしても、一貫してダーク。それ以外の色はない。どんな物が登場しようとも、作品に流れる色はダーク。
閉塞感、憎しみ、妬み、堕落、疲労感、全てが交じり合って限りなく黒に近いダーク。
心の醜さ、そして現実から逃げたくて逃げたくて、もがき苦しむ人間の姿はきっとこうなんだろうと思える。
彼女達が自ら望んだ行動なんて、どこにも無いのではないだろうか。姑の介護に疲れきり、娘にはタンス預金を奪われたパート仲間に師匠と呼ばれる主婦、旦那とは完全マンネリ化し、息子は引きこもりの元信金OL主婦、見栄っ張りで車や洋服のために借金に借金を重ねる自転車操業の主婦、みんな最初は良かった。いつからか、人生の歯車がおかしくなっている。しかも自分だけのせいじゃないと、そう思ってる。だから、人を殺しても、人を解体しても、前を向ける。太陽の下に生きていられる。
きっと今、同じ題材にしても出てくる主婦の閉塞感や挫折感は同じなんだろうなと思う。
人間が本質的に、そこに落ちるとき、こうなるんだなと思う。
これを読んで、すっきりすることなんて何ひとつない。
完全に闇だが、彼女・彼らの行動を完全に否定できないと思ってしまう一冊。
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【書評】ダブルジョーカー-柳広司
- 2010-01-15 (金)
- 小説
著者:柳 広司
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-08-25 )
価格:¥ 1,575
単行本 ( 257 ページ )
ISBN-10 : 4048739603
ISBN-13 : 9784048739603
『ジョーカー・ゲーム』シリーズの第2弾である。
今回も結城中佐率いるスパイ組織「D機関」が主軸にあり、今回はライバル組織「風機関」との熾烈な争いが繰り広げられる。
構成は前回と同様、D機関の活動が短編集にまとめられている。
D機関は地方人と呼ばれる陸軍大学出身者以外で構成された諜報機関であるが、今回登場するのが風機関と呼ばれる陸軍大学上がりの精鋭部隊である。
「殺すこと」「殺されること」を忌み嫌う諜報組織D機関に対して、「殺せ」「自ら死すべし」を美とする陸軍出身の風機関は、真っ向から理念を異にする。
しかし、いずれ劣らぬ諜報機関であることは疑う余地も無く、諜報機関にスペアはいらないという諜報機関同士の食うか食われるかの熾烈な争いが最も面白いストーリだ。
両機関には、同じ目的を果たす組織として共通項は多い。1人の統括者と諜報員複数名、そして諜報活動に必要であろう知識、技術、耐性は全て互角ともいえる。
その意味で、諜報機関としての組織力は1人の統括者に拠る部分が多い。結城中佐なのか、あるいは風機関の風戸なのかその人間性が組織にうまく表現されている。
その2つの機関が、同じ事件でダブルブッキングしてしまう、いやダブルブッキングされていた。諜報機関は1つしか要らない、この事件で負けた組織が解体され、ダブルジョーカーとうい状況にはなりえない。
読者含め、先の先まで読みきれるかがカギとなる。
結城中佐が、魔王と呼ばれる所以がついに明かされる点も本作の醍醐味であろう。
恐らく大半の読者がそうであろうが、前作から読んでいれば間違いなく結城中佐ファンになってしまう。
どれだけ風機関が優秀であろうとも、きっと結城中佐が勝つだろうと、生き残るのはD機関だろうとついつい思い込んでしまう。これを安心感として片付けるか、手に汗握る息苦しさに欠けるというかは、読者次第。
本作品の読み方としては、「疑ってはいけない」に限る。
荒唐無稽な点もある、そんなにうまくいくのかい?と思う点もある、しかしそれを差し引いても読み応えがある本だ。
細かいところは気にせず、まずは鵜呑みにして読みすすめることを、お勧めする。
草食男子とはほど遠い、ハードボイルドな男に憧れる人にはお勧めの一冊。
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