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【書評】ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環-ダグラス・R・ホフスタッター

書評

ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環

著者:野崎 昭弘 はやし はじめ 柳瀬 尚紀

出版社:白揚社( 1985-05 )

単行本 ( 765 ページ )

ISBN-10 : 4826900252

ISBN-13 : 9784826900256




書評

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

著者:ダグラス・R. ホフスタッター

出版社:白揚社( 2005-10 )

価格:¥ 6,090

単行本 ( 763 ページ )

ISBN-10 : 4826901259

ISBN-13 : 9784826901253



どうやら20周年記念版も刊行されているようです。



原書は今から30年前に刊行され、日本ではその5年後に出版された一般向けの科学書。いまでは電話機の敷き物になっているGEBであるが、30年経った今でも読み返すこおとも多い、価値ある一冊である。

数学者、論理学者のゲーテル、だまし絵で有名な画家エッシャー、音楽家のバッハに共通する「自己言及」というテーマのもとに不思議の環という無限ループを炙り出す。




何よりもタイトルにあるとおりゲーテル、エッシャー、バッハを理解しておく必要があるためここにまとめておく。

  • ゲーテル
  • チェコ生まれのゲーテルは、完全性定理及び不完全性定理、連続体仮説に関する研究が有名な数学者・論理学者だ。存命であれば今は100歳越えている。基礎数学・論理学における20世紀最大の発見とされる「不完全性定理」があまりにも有名。

    「数学は自己の無矛盾性を証明できない」

    ことを示した。数学自身による証明について記述可能ならば、自身を証明する事も、否定を証明する事もできない命題が存在してしまうということだ。つまり、自己言及するとそこに矛盾が生まれてしまうということ。それが本書でのメインテーマである「自己言及」につながる。

  • エッシャー
  • マウリッツ・コルネリス・エッシャーは、オランダ生まれオランダ育ちの画家である。版画製作で有名だそうですが、絵画に数学的要素を取り入れた「だまし絵」のほうが知られている。

    エッシャー


    エッシャーの絵画は、錯覚デザインではない「だまし絵」だ。錯覚を起こさせるというメカニズムは同じだが、錯覚デザインによる錯覚は、色や形を認識する瞬間に起こる。だまし絵は、「見る」という状態が脳内で完成する直前に全体の矛盾を認識することをいう。心理学では前者を「低次知覚」といい、後者を「高次知覚」という。

    上の写真は、エッシャーのひとつの作品だが、ここで表現されているのは「無限」「自己言及」である。滝が落ちて水車が回る。水車の右にある水路から見ると、水が奥に流れるにつれて水路の位置も低くなっている。ところが水路の支柱に視点を変えると、一番低いと思ったところから滝が落ち、水路の終着点が実は一番高いところになっている。

    これは滝をモデルにしたものであるが、このような無限の連鎖、無限の自己言及というのはエッシャーの絵画では頻繁に見出せる。

  • バッハ

  • ドイツ三大Bのひとり、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ。ドイツ語でBACHとは、小川の意味なので、小川さんとでも呼ぼうかな。
    本書ではカノンやフーガの技法に見られる旋律の無限上昇から自己言及、無限の連鎖を取り上げている。
    音楽理論はあまりよく知らないが、バッハの例でいうと、潜在的な無限が存在するカノン、「諸調によるカノン」を作曲する。宮廷に招かれたバッハは、王に与えられた主題を使ってカノンを作る。一見主題からどんどん遠のいていくように聞こえるカノンは、転調を繰り返して高まってゆき、1オクターブ高くなって元の調に自然に戻ってくる。
    バッハはこの音楽の無限性を意識し、余白に「転調が高まるとともに、王の栄光も高まりゆかんことを」と記しているそうです。

    これが大バッハの本書の自己言及、無限の連鎖に通ずる部分です。





    さて本書は、主題(ゲーテル・エッシャー・・・・)と副題(不思議の環)を逆にしてもいいのでは?と思わせる。あくまでもメインテーマは自己言及と無限の連鎖である。それをゲーテルの不完全性定理、エッシャーのだまし絵、バッハの無限カノンから炙り出す。

    ちなみに不思議の環というのは、端的には階層の螺旋を上昇・下降すると意外にも元の場所に戻ってしまうという概念であるが、詳しくは本書を通じて理解してもらいたい。


    直感的に「不思議の環」の概念が分かるのは、エッシャーのだまし絵だろう。
    「さぁ出発、ぐるぐる回って、同じ場所に戻った」これが絵画から読み取れる。
    ただ直感的に分かるのはこの程度で、後半になればなるほど、数学的記述が多くなって恐らく脱落率は後半は急上昇しそうな本だ。

    ただ、いま流行りの脳本なんかを読むよりは、本書を読んだほうが脳トレにはなる。
    数学・美術・音楽あまりにも遠い3つが、ひとつになる瞬間は甘美である。

    斜め読みでも通読するべきだ、全体理解にはかなりの根気がいるが一部理解でもいいから読みたくなる一冊。


    読者は最後にきっと思う、「で、何を書いたの?」と。

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