著者:シルヴィオ ピエルサンティ
出版社:筑摩書房( 2007-03 )
価格:¥ 798
新書 ( 237 ページ )
ISBN-10 : 4480063528
ISBN-13 : 9784480063526
マフィアのワルさカッコよさというイメージを一掃させた、イタリア・マフィアの実態を描いた本書。
マフィアといわれて日本人が背筋を凍らせるようなイメージを持っているのだろうか?中国マフィア、アメリカマフィア、ロシアンマフィアなど組織犯罪として固有名詞化しているが、それが自身に関わる恐怖の対象として戦慄きが止まらない人はいない。
一方で、マフィアといえばゴッドファーザーを思い出す日本人は多い。血族、家族、仲間、名誉を守り強固な絆の中で繰り広げられる裏切り、復讐、ファミリーの世代交代を描いたマフィアの映画である。これを観て、マフィアに羨望の眼差しを向けている人も多い。
しかし、本書はそんな生半可なイメージを完全に徹底的に破壊する。マフィアは麻薬、殺人、密輸、密造、恐喝を生業とする犯罪集団であり、歯向かう者には一切容赦しない。マフィアを訴えた人間は必ず殺し、担当した検察官、有罪判決を下した裁判官は報復の対象となる。そして、一度ターゲットとなれば必ず実行される。またそれが、一般市民に見える形で行われるのがマフィアたる所以なのだろう。
イタリア観光名所の要である、ウフィッツィ美術館ですら報復を実行する場所として選ばれる。
まず理解しておかなければならないのは、マフィアは一般市民とは切手も切れない関係であるということ。イタリアの南、シチリア島はイタリア・マフィアの起源と言われているが、海産物や農産物が豊富なシチリアは近隣諸国にとって大きな魅力であり、様々な国に支配され続けた場所であった。
支配国が次々と変わる中で、法律・政府・権威に対してシチリア市民は不信感を募らせる。圧政から逃れようと、彼らは独自の文化を生み出してきた。そこにマフィアが生まれる土壌があったのだ。マフィアは支配国が変わる度に変わる法律の外で独自に紛争を解決しようとし、民営の組織を作った。その組織がマフィアへとつながっていく。
その組織は端的には「民間の警察機関」である。
民事不介入とは違い、民事に積極的に介入する私的な警察組織がマフィアと言えるだろう。
争いごとにはマフィアあり、の社会が成り立つようになり職業としての犯罪集団が生まれるようになった。
争いがなければ民間の警察は運営できないわけだから、当然ながら積極的に争いごとを仕掛けるようになる。それがさらに犯罪を生み出し、負の連鎖が始まる。
壊され続けてきた名誉や安全を守るという大義名分のあるマフィアの暴走は誰にも止めることができない。それは島の人間たちが生み出した組織なのだから。
マフィアの起源の話に逸れたが、現代に戻ろう。
妻や家族には一切手を出さない男の社会とイメージしてきたが、実態はそうではないらしい。むしろ、仲間を裏切れば身内同士で殺し合わせることもあるという。
本書を通じて、そのような「殺人」がどれだけ簡単に行われているかという部分と、なぜマフィアの報復の対象となったのかが克明に描かれている。
マフィアの全貌をつかむことは誰にもできまい。組織が「秘密」とともに拡大してきた手前、どんなマフィアが改心して内部告発したとしても、全容とはいくまい。
本書も同じであり、全容とはいかないがリアルな事実がどっさり詰まっている。ゴッドファーザーでしかマフィアを知らない私にとっては驚愕の事実だらけであった。
マフィアがどれほどまでイタリア社会の中枢にまで入り込んでいるか、マフィア無しには生きられない人間がいかに多いか。
ただ、世論が少しずつ反マフィア、マフィア撲滅に動きつつあり、マフィア構成員に対しての有罪判決が下されるようになってきているというので、いつかはマフィア根絶の日がくるのかもしれない。シチリア市民を守るために出来た組織が、イタリア市民によって壊滅されるのかもしれない。
世界有数の観光地であり、歴史的遺産の多いイタリアの一面を垣間見れる一冊。
あ、日本語訳は誤訳だらけです。お世辞にも上手いといえない翻訳ですので要注意。


