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【書評】死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う-森達也

書評

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

著者:森達也

出版社:朝日出版社( 2008-01-10 )

価格:¥ 1,680

単行本 ( 328 ページ )

ISBN-10 : 4255004129

ISBN-13 : 9784255004129




死刑制度「存置」あるいは「廃止」を著者と共に考えぬくための一冊。
存置だろうと廃止だろうと、死刑について徹底的に考え抜いたことがない私にとっては貴重な本である。身内が殺されたらきっと死刑を望むだろう、でも身内が誰かを殺したらきっと死刑を望まないだろう。そんなレベルでしか考えたことがない死刑。

考えても考えても、答えはでてくるかどうか分からない。

そして著者も同じであり、存置か廃止かの意思表明そしてその援護をする本ではなく、共に考えようというスタンスの本。だから読める。

ただ、死刑制度が廃止されようと存置されようとよりよい社会を実現させるための手段であることには変わりない。人が人を殺めることを社会として善とするかどうか、ただその選択だけなのだ。だから、本当は皆が自分で考えるべきなのだ。極刑を死刑としている日本、その国民である以上は決して思考を停止してはいけない、死刑について徹底的に考える必要がある。
しかし、死刑について秘匿されている事実が多すぎて考える材料が少ないのが日本だ。

そんな日本の中で、著者は3年の月日をかけて死刑囚,元刑務官,弁護士,被害者遺族,存置派,廃止派にインタビューしあらゆる感情・情緒をすくいあげていくが、率直に迷っている。焦点が定まらないような迷いではなく、揺りかごのような揺れなのだ。
結局、死刑当事者(遺族、加害者家族、本人、関係者)にでもならない限り、この揺れは収まらないだろう。読み終わっても著者と同じく揺れている。

しかし最後に著者は、揺れが収束するようになる。広島の死刑囚に面会した後の言葉。

「僕は彼を死なせたくない。なぜなら彼を知ったから。会ったから。会って話したから。」


これが本能なのである。副題にあるように、人は人を救いたいのだ。
どれだけ考えても、論理的であろうと、理論に立脚していようとこの問題の根底にあるのは、「感情」なのだ。

この素直な文章に至るまでの葛藤は著者にしか分からない。しかし、この最後の本能剥き出しの言葉は、そのまま受け止めたいと思う。

死刑について答えを求めず考える。この行為を始めるために全ての人が読み始めるべき一冊。








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