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【書評】論争 若者論-文春新書編集部

書評

論争 若者論 (文春新書)

著者:文春新書編集部

出版社:文藝春秋( 2008-10 )

価格:¥ 777

新書 ( 233 ページ )

ISBN-10 : 4166606654

ISBN-13 : 9784166606658





大人たちは若者をどのように見ているのか、の全体像を把握するにもってこい。

平成不況から脱せぬまま、小泉構造改革以降の格差社会が出現した。働いても働いても「普通の」生活ができないワーキング・プア層が社会に現れ、彼らが若者論の論争の的となった。

「若者論」といわれるとき、若者とは中学生・高校生を対象とすることは少ない。そこにいる若者とは、社会に出たにもかかわらずそれ相当の給与を貰えずワーキングプアと呼ばれるような貧困層であったり、ニート・フリーターといった定職につかない20代の層である。



本書はその彼らにまつわる文藝春秋や論座での論文・討論の中から13本を収録したものである。
年功序列の制度が崩壊し、働き方が自由になりその自由の選択の中での「いまの若者」であるといった一方的な視点ではなく、それは社会が作った貧困層であるという逆の視点もあり、今の若者を知るには非常に有益な本である。

三部構成になった本書には常に2極化されたテーマ論文・討論がピックアップされている。

  • 希望か甘えか
  • 貧困か自由か
  • 絶望か殺人か

  • いくつかの論文をピックアップしてみる。

    第一部
    「「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争」赤城智弘


    はフリーター視点での若者論である。あまりにも鮮烈なタイトルで、論争になった。

    月給は10万円強。北関東の実家で暮らしているので生活はなんとかなる。だが、本当は実家などで暮らしたくない。両親とはソリが合わないし、車がないとまともに生活できないような土地柄も嫌いだ。ここにいると、まるで軟禁されているような気分になってくる。できるなら東京の安いアパートでも借りて一人暮らしをしたい。しかし、今の経済状況ではかなわない・30代の男が、自分の生活する場所すら自分で決められない。しかも、この情けない情況すらいつまで続くか分からない。年老いた父親が働けなくなれば、生活の保障はないのだ。



    赤城氏にとっては、自分で生きることができないため親に頼る、そしてその親が働けなくなれば死が近づくという。
    フリーターというエリート層とは対岸にいるものがエリートを超えるには・・
    「戦争で兵役にいけば,フリーターの俺でも東大のエリートをひっぱたくチャンスがある」

    ということだ。平和というものは変化の無さである、穏やかで変わりがないもの。では「勝ち組と負け組」の変わりのない構造をどう打破するのか?それにはひとつ戦争という方法だと。

    未来も希望も失ったものが最後に打破する方法として選んだものが、「希望は、戦争」につながる。

    これはひとつのメッセージとして重く受け止めるべきだろう。


    第二部 新庄、中田はなぜ引退したか 城繁幸

    本論では、昭和的価値観と平成的価値観というふたつの軸をもって新しい価値観に基づいた職業感を提案する。

    昭和的価値観は、端的には年功序列のレールを歩むということ。
    一方の平成的価値観とは、キャリア意識が強く自己実現すべき目標が明確にもっており就職はただの実現のためのツールと考えていること。

    これをタイトルの野球の新庄、サッカーの中田の引退にあてはめると、どちらの価値観に則って生きているのかがわかる。



    これ以外には、秋葉原事件のトピックスなども目立つ。最後にはブックガイドもついており若者論の全体像を把握するには最初の一冊として最適だ。


    若者が読むには、自分たち世代が大人たちからどのように見ているのかを知るために、
    そして大人にとっては、これからの社会を担う20代の若者の目前にあるものは何か、を知るための1冊。



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