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【書評】ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話-マネー・ヘッタ・チャン
- 2010-01-21 (木)
- ビジネス・経済・キャリア | 社会・政治・法律
著者:マネー・ヘッタ・チャン
出版社:経済界( 2009-11-25 )
価格:¥ 1,050
単行本(ソフトカバー) ( 152 ページ )
ISBN-10 : 4766784588
ISBN-13 : 9784766784589
しいて言うなら、「ユーモラスな社会風刺本」である。そこに「現代の」とつけたほうがいい。
幼少・少年期に童話から得たものは多く、善悪の判断や協調性の大切さなどを教わったはずだが、マネーの仕組みだけは童話から学んだ覚えが無い。マネーの話を童話から学ぶことはできなかった。そこへ登場したのがこのマネー版グリム童話だ。
とはいえ、童話といっても、あくまでも現代日本を取り扱った書籍で、古典化するものではなさそう。短編集になっており、トピックスとしては、超一流金融機関の詐欺まがいの融資、最近流行の社会企業のビジネスモデルとカラクリ、先進国から新興国へのODAの実像、最近広告をバンバン出している弁護士による債務相談などなど、マネーにまつわる風刺集だ。
分かりやすい例では、実名は出していないが、明らかな「カツマー社会」への鋭い風刺は、爽快感すらある。
一体いつどこから沸いてきたのか、巷で増える勝間信奉者たち。競争社会で生き抜く手法が、自転車通勤の等身大の女性から発せられたのだから、時代の要請でもあっただろう。しかしそのカツマーに待ち受ける将来へ警告ともいえる痛烈な批判。
これは詐欺の手口を紹介する本ではないのは確かで、紹介されいている事案も違法なものではない。どちらかといえば、あまりにも世の中がクリーンでキレイだと思い込んでいる人やビジネスモデルを理解していない人への忠告・説法集に類するかなと。
この書籍を読むに当たって、カツマーという存在を知らない限り「第2話 カネヘルンの笛吹き」を風刺だと思って読むことは出来ないだろうし、その他トピックスに関してもバックグラウンドの知識がなければ大して面白くないのでは?と思う。
一見して誰にでも分かる本のようではあるが、著者の意図どおりに楽しめるとは限らない。
悪魔の辞典のような、痛烈な社会風刺を求める日本にはぴったりの一冊。
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【書評】数学ガール/ゲーデルの不完全性定理-結城 浩
- 2010-01-16 (土)
- 科学・テクノロジー
著者:結城 浩
出版社:ソフトバンククリエイティブ( 2009-10-27 )
価格:¥ 1,890
単行本 ( 408 ページ )
ISBN-10 : 4797352965
ISBN-13 : 9784797352962
数学ガールシリーズの第三弾!だったらしい。
読み進めているうちに、どうも意味不明な人々が出てくるなと思ったら、どうりで前作があったようで。
『数学ガール』シリーズは、
「数学ガール」
「数学ガール/フェルマーの最終定理」
「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」
の3部作。
数学本、学術書というよりは、ミルカさん+テトラちゃん+「僕」という三人の高校生と、中学生のユーリという登場人物が出てくる「数学・青春・物語」という位置づけ。
触れられるトピックの割には大書である。それだけ懇切丁寧な数学的な説明に加えて、数学とは若干違う青春ストーリーも織り交ぜてあるからだ。
これを学習参考書として考えていると、青春ドラマが邪魔だと感じるだろう。逆に数学をより身近なものにしたいという人には非常に適している。
よくある「マンガで分かる・・・」シリーズや「誰でもわかる・・・」シリーズとは天と地の差である。
ゲーデルの不完全性定理を学ぶにあたって、それに必要な集合と論理を基礎からていねいに学べる。不完全性定理は最終章で展開されるが、それまでの全ての章は、それが理解できるようにするための準備運動で、”数学的帰納法”(ぺアノ算術)・”ε-δ論法”・”対角線論法”など、かなりのボリュームをとって説明している。説明という言葉は不適切で、どちらかというと大人が子供に教えている現場を横から「覗いている」というほうが適切かもしれない。
論理的に飛躍する部分は皆無といってよく、飛躍しそうと思ったらすかさずにテトラちゃんが「分からない」と言って「僕」が上手に答えてくれる。その言葉に何度救われたことか。
ただ、半分以上は何の予備知識なしでも理解できるが、後半はやはり手ごたえ十分。
表紙やタイトルに惑わされずに、あくまでも数学書である点は注意あれ。
これを高校生時代に読めたならどれだけ数学が好きになったことかと思える一冊。
ちなみに、著者はウィキクローンの1つであるYukiWikiの開発者。
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【書評】ダブルジョーカー-柳広司
- 2010-01-15 (金)
- 小説
著者:柳 広司
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-08-25 )
価格:¥ 1,575
単行本 ( 257 ページ )
ISBN-10 : 4048739603
ISBN-13 : 9784048739603
『ジョーカー・ゲーム』シリーズの第2弾である。
今回も結城中佐率いるスパイ組織「D機関」が主軸にあり、今回はライバル組織「風機関」との熾烈な争いが繰り広げられる。
構成は前回と同様、D機関の活動が短編集にまとめられている。
D機関は地方人と呼ばれる陸軍大学出身者以外で構成された諜報機関であるが、今回登場するのが風機関と呼ばれる陸軍大学上がりの精鋭部隊である。
「殺すこと」「殺されること」を忌み嫌う諜報組織D機関に対して、「殺せ」「自ら死すべし」を美とする陸軍出身の風機関は、真っ向から理念を異にする。
しかし、いずれ劣らぬ諜報機関であることは疑う余地も無く、諜報機関にスペアはいらないという諜報機関同士の食うか食われるかの熾烈な争いが最も面白いストーリだ。
両機関には、同じ目的を果たす組織として共通項は多い。1人の統括者と諜報員複数名、そして諜報活動に必要であろう知識、技術、耐性は全て互角ともいえる。
その意味で、諜報機関としての組織力は1人の統括者に拠る部分が多い。結城中佐なのか、あるいは風機関の風戸なのかその人間性が組織にうまく表現されている。
その2つの機関が、同じ事件でダブルブッキングしてしまう、いやダブルブッキングされていた。諜報機関は1つしか要らない、この事件で負けた組織が解体され、ダブルジョーカーとうい状況にはなりえない。
読者含め、先の先まで読みきれるかがカギとなる。
結城中佐が、魔王と呼ばれる所以がついに明かされる点も本作の醍醐味であろう。
恐らく大半の読者がそうであろうが、前作から読んでいれば間違いなく結城中佐ファンになってしまう。
どれだけ風機関が優秀であろうとも、きっと結城中佐が勝つだろうと、生き残るのはD機関だろうとついつい思い込んでしまう。これを安心感として片付けるか、手に汗握る息苦しさに欠けるというかは、読者次第。
本作品の読み方としては、「疑ってはいけない」に限る。
荒唐無稽な点もある、そんなにうまくいくのかい?と思う点もある、しかしそれを差し引いても読み応えがある本だ。
細かいところは気にせず、まずは鵜呑みにして読みすすめることを、お勧めする。
草食男子とはほど遠い、ハードボイルドな男に憧れる人にはお勧めの一冊。
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【書評】ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌-芝 健介
ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)
著者:芝 健介
出版社:中央公論新社( 2008-04 )
価格:¥ 903
新書 ( 282 ページ )
ISBN-10 : 4121019431
ISBN-13 : 9784121019431
たった2世代前、ドイツを中心とした欧州において行われたヒトラー率いるナチスによるユダヤ人大虐殺、ホロコースト。ホロコーストは誰の手によって、いつから何故起きたのか、全貌を明らかにしたものだ。
日本でも、その事実は大半の人は知っているだろうホロコースト。ただ、なぜ対象がユダヤ人なのかを理解している人はそう多くはないのではないだろうか。
このボリュームで読めるホロコーストの全容が把握できる書籍は他にない。その意味で非常に貴重な本である。
中世ヨーロッパ時代からキリスト教社会の中では、イエス・キリストを救世主として認めなかったユダヤ教徒は迫害されてきた。そしてヒトラーが成人まで過ごすオーストリア=ハンガリー帝国は反ユダヤ主義が蔓延していた。
この反ユダヤ主義を踏襲したヒトラーがナチス党党首になり、ユダヤ人を根絶やし続け敗戦するまでの事細かな過程を記している。
序章 反ユダヤ主義の背景-宗教から「人種」へ
第1章 ヒトラー政権と迫害の開始-「追放」の模索
第2章 ポーランド侵攻-追放から隔離へ
第3章 「ゲットー化」政策-集住・隔離の限界
第4章 ソ連侵攻と行動部隊-大量射殺
第5章 「最終解決」の帰結-絶滅収容所への道
第6章 絶滅収容所-ガスによる計画的大量殺戮
終章 ホロコーストと歴史学
1章では、先に述べたようにユダヤ主義の根底にあるユダヤ教徒への迫害に始まりをもち、信者ではなく人種としてのユダヤ、つまりユダヤ人への迫害への転化の過程をたどる。
その後は、アーリア人優位の優生学から導き出したユダヤ人侮蔑の帰結としての国外追放政策、その後の隔離政策まで、そして最終解決策としてのユダヤ人絶滅までの絶望的な政策を追う。
ナチ・ドイツにとってユダヤ人の存在は「問題」であった。
そして1942年1月、その問題に対する最終的な解決は計画的・組織的な大量殺戮、つまり「ユダヤ人根絶」であると結論づけられた。その結果、ラインハルト作戦による絶滅収容所始めアウシュヴィッツといった絶滅収容所が起動し始めることとなった。
日曜の食事がラード20グラムしか配給されないという事実
労働を通じて抹殺することが最も生産的であるという思考の残忍性
人身の自由という国民の基本的権利が停止するということ
戦争を知らない世代にとって、ホロコーストは遠い昔、アウシュヴィッツで起きた1つの大量虐殺という理解でしかないだろう。アウシュビッツという所で起きたこと、大量虐殺という言葉の重みを本書を通じて感じるべきである。
1500万人のドイツ軍兵士が、助けたユダヤ人はたった100人。たった数年間に殺されたユダヤ人は600万人。
そのときのドイツ国民の無関心さ。
本書を通じて、ナチスが最終的な解決として根絶を目指すまでの意思決定のターニングポイントが、各種研究結果や統計情報を元に紹介されている。
ホロコースト=アウシュヴィッツという人には、お薦めの一冊。
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【書評】なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学-小堺 桂悦郎
- 2010-01-08 (金)
- 投資・金融・会社経営
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学
著者:小堺 桂悦郎
出版社:フォレスト出版( 2006-05-20 )
価格:¥ 1,470
単行本 ( 193 ページ )
ISBN-10 : 4894512262
ISBN-13 : 9784894512269
タイトルに惹かれたのは何年前だろう。結局買ったのは中古本屋。
裏とはいえ会計学の冠がついているが、実際は中小企業向けの節税対策本、あるいはこの手の本を一切読んだことの無い人向けのお金のカラクリ本ともいえる。
とはいえ、会計の知識が全くなければ突然「減価償却とは」というコラムが出てくるのには戸惑うだろう。
目次は極めてユニークなのでご紹介。
「なぜ、社長のベンツは、中古の四ドアなのか?」
「なぜ、年商の四倍の借金のある旅館が潰れないのか?」
「なぜ、イケイケの会社が倒産してしまうのか?」
「なぜ、借金社長は税金を払いたがるのか?」
「なぜ、ラブホテル経営者は税金を払わないのか?」
「なぜ、社長は生命保険が好きなのか?」
「なぜ、社長は失敗しても投資し続けるのか?」
が、しかし、大変残念なのがタイトルそもそもが目次にも関わらず直接的な解答が無いということだ。なぜ4ドアなのか?に答えがないのだ。
タイトルに惹かれた読者にとっては、納得できない部分ではなかろうか。
読んでもらいたい読者層は、
・給料を上げたいと考えている人
・数字は苦手だけど会計を知りたい人
・営業関係の仕事している人
・経理関係の仕事をしている人
・転職や就職を考えている人
・新入社員や就職活動をしている学生
・中小企業経営者
ということだが、学生を除いたらこの本がどれほど有益なのかは疑問である。
1章だけ読むべし、その後読み続けるかは自身で判断すればよし。
間違っても1章から徐々にテンションが上がっていくような本ではない。
1章に全てが詰まっている。文体しかり、知識レベルしかり、1章で分かるはずである。
学生や新入社員にとっては、会計が身近に感じられるかもしれない一冊。
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【書評】ジョーカー・ゲーム-柳広司
- 2010-01-05 (火)
- 小説
著者:柳 広司
出版社:角川グループパブリッシング( 2008-08-29 )
価格:¥ 1,575
単行本 ( 252 ページ )
ISBN-10 : 4048738518
ISBN-13 : 9784048738514
柳広司氏の著作は初めてである。歴史上の偉人を取り扱うミステリーをよく書いているそうであるが、本作『ジョーカー・ゲーム』はオリジナルの登場人物による作品。
基本構成は、短編集である。
結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”で繰り広げられるスパイ活動を背景としたミステリー小説。
登場人物は魅力的であって、中でも結城中佐は異色である。訓練生には魔王と呼ばれ頭脳明晰、しわひとつない白い手袋と杖をついた風貌からはいかにもである。
彼のモットーは「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人や自死は最悪の選択肢」であるという戦時中の軍人魂を真っ向から否定する。とはいえ、あくまでもスパイとしての規律であるから、軍人は軍人魂を持つことに異論はないだろうが。
さて、この結城中佐を中心とするD機関で繰り広げられるスパイ活動が短編の格になる。現場で活動するスパイの人物描写は存在しない、スパイという職業から名前も出身も経歴が全て隠されているからである。それでも、頭脳明晰の帝大出身スパイを際立たせているのが軍人上がりの佐久間の人間味。
戦時中ということで、ストーリーの背景が難しい?と思いきや特に歴史観を持たずとも楽しめる小説である。
スパイという日常生活とはかけ離れた世界とはいえ、007のような映画を想像すればきれいに当てはまる。そんな世界を描いている。
結城中佐の頭脳明晰ぶりは、随所に見られそこは見所のひとつではある。
ただ抑揚のないストーリー展開に飽きてしまいそうになるが、短編でよかったと思う。
2009本屋大賞第3位
このミステリーがスゴイ!第2位
第62回日本推理作家協会賞受賞!
まどわされてはいけない。
年始一冊目にしては、ハードボイルドな一冊。
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【書評】裁判官の爆笑お言葉集-長嶺 超輝
- 2009-12-03 (木)
- 新書・文庫
著者:長嶺 超輝
出版社:幻冬舎( 2007-03 )
価格:¥ 756
新書 ( 219 ページ )
ISBN-10 : 4344980301
ISBN-13 : 9784344980303
裁判官制度が始まったおかげで、裁判に関心を寄せる人が増えているだろう。
裁判を傍聴した経験がないので裁判官のイメージといえば、感情を表に出さず、石部金吉のような想像をしてしまう。しかし、本書を読んでそのイメージが少し崩れた。むしろ親近感まで沸いてきた。法曹界という絶壁の向こうにある世界を、我々一般民の元へ近づけてくれた本である。
著者は裁判傍聴マニアであり、傍聴した中で裁判官の口から出たとは思えないような面白い言葉を集めた爆笑お言葉集である。
爆笑するかどうかは別として、裁かれるものへの裁判官の愛情の印が言葉に出るものだと感じた。罪を償うためには罪の意識、贖罪の芽生えを感じさせる必要があり、裁判官の言葉はずしりと重いだろう。
どれだけ法服を身にまとい、鉄仮面のマスクを被っていようとも中身は人間である。
ひとつだけ引用してみる。
暴走族から抜けようと思った少年に暴行を加え死に至らしめた少年に
「暴走族は、暴力団の少年部だ。犬のうんこですら肥料になるのに、君たちは何の役にも立たない産業廃棄物以下じゃないか」
と言い放つ裁判官。爆笑とはかけ離れているが、親近感が沸く。この言葉は賛否両論ああったが、悪を罰するという意味では力強い言葉じゃないか。
裁判をひとつ身近に感じさせる一冊。
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【書評】アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか-濱野 智史
- 2009-12-02 (水)
- コンピュータ・インターネット
著者:濱野 智史
出版社:エヌティティ出版( 2008-10-27 )
価格:¥ 1,995
単行本 ( 352 ページ )
ISBN-10 : 4757102453
ISBN-13 : 9784757102453
Gooele、mixi、ニコニコ動画。いまのインターネットの話題をさらうサービスたち。
巷に氾濫するインターネット本では「Googleをどのように活用するか、mixiにおけるコミュニケーション方法指南、ニコニコ動画の話題の作り方」こんなタイトルが泳いでいる。
しかし、本書のアプローチはそれとは異にする。取り上げるサービス群は何ら変わりないが、サービスを解析する視点が違う。
キーワードは「アーキテクチャ」だ。
本書は学術本であり、情報社会論の学問領域に分類される。サービスの使い方というユーザー視点ではなく、なぜこのような仕組み・設計(システム的な意味ではない)がなされているのかという俯瞰的な問題設定である。
中でも秀逸なのが、2ちゃんねるやmixiが、なぜ日本で流行った・流行っているのか?という問題定義に「日本人=集団主義」という構図から半ば自然発生的に生み出されたサービスという答えを提示している部分だ。
「ムラ的共同体→内輪→世間に個人が埋没」
そして、この世間・社会に個人が埋没する過程がSNSでも起きているという。それが日本人にとっては快感・安心感であるとも言う。
日本人=集団主義という図式は今に始まった指摘ではない。
しかし、WEBサービスとは個人主義的な議論が多い。それを覆す本書は読む価値がある。
なぜセカンドライフよりもミクシィが日本で流行るのかがわかる一冊!
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【書評】プリズン・トリック-遠藤 武文
- 2009-09-28 (月)
- 小説
著者:遠藤 武文
出版社:講談社( 2009-08-07 )
価格:¥ 1,680
単行本 ( 328 ページ )
ISBN-10 : 4062157063
ISBN-13 : 9784062157063
第55回江戸川乱歩賞受賞作、原題は『39条の過失』である。
交通事故による刑事事件の厳罰化という今日のトピックスを取り上げており、また刑務所での完全密室殺人という限りなく不可能な挑戦にチャレンジしている点は高評価。
ただ減点せざるを得ないのが、作品の構成である。
まず、視点の移動があまりにも多く無駄な登場人物にもスポットが当たりすぎている。誰が主人公で、誰が脇役なのかがわからないまま最後を迎えてしまう。
刑務所内という一般人の知らない世界を描いているということで、描写は丁寧であるがそれでもどうも舞台がイメージしづらい。
それでも江戸川乱歩賞受賞作として君臨したのは、著者のデビュー作にしてここまで大きなテーマに取り組んだという気骨のある著作だからだろう。
原題の39条とは日本国憲法39条を指し、一事不再理についての規定であり、本書の大きなテーマでもある。
交通事故の被害者と加害者、そして加害者の親族が登場するのだが、加害者の遺族が加害者と絶縁する。その理由を知ったときは鳥肌が立つほどの鮮烈である。
全体を通じて、粗さが目立ち何度も立ち往生してしまいそうになるが、ここはひとつ最後まで読み通してもらいたい。
なぜ江戸川乱歩賞の選考委員がこの作品を選んだのか、うっすらと分かる気がする作品である。
「志の高さ」が文字に滲み出るような、男らしい一冊。
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【書評】新参者-東野圭吾
- 2009-09-22 (火)
- 小説
著者:東野 圭吾
出版社:講談社( 2009-09-18 )
価格:¥ 1,680
単行本 ( 354 ページ )
ISBN-10 : 4062157713
ISBN-13 : 9784062157711
『卒業』『悪意』『赤い指』等に登場する加賀恭一郎警部補の鋭い洞察力が冴え渡る東野圭吾著、加賀シリーズの最新作だ。
本書は、ひとつの事件を複数の関係者の視点で取り上げた短編集だ。
初出は『小説現代』2004年8月号に始まり、2009年7月号まで続いている。丸5年かかっている。中には1年のブランクもある期間もある。それでも物語が読まれ続けていたのは1話の完成度の高さの表れだろう。
日本橋・人形町・浜町といった都内でも下町情緒溢れる街を舞台とした殺人事件。真犯人を探すことが目的であるが、そんなことはどうでもいいと思わせてしまうような人間味溢れる関係者達のエピソード。
嫁姑問題を抱える家族、溝を埋めたい夫婦のとった悪戯、祖母の真相を知る家族ともう一人の他人、新参者の加賀恭一郎がそんな人間模様を炙り出してくれる。まるで殺人事件とは別物語なのだと錯覚してしまう。
だが、それは伏線であった。最後にはやはり殺人事件の謎解きが始まるのが著者らしい。
著者が描きたかったのは、「人情」ではないだろうか。ひとつの殺人事件という殺伐とした事実は、スタンドアローンで起きているわけではない。その被害者、加害者、関係者がいる。その彼らには小さくても人情味溢れる物語があり、それが線となり最後には繋がっている。
各話にはそれぞれ新たな登場人物がおり出来事も違うため、なかなか感情移入する余地はない。しかし各話を読み終えたあと、その登場人物が誰であろうと関係のない新鮮で心地よい感情が芽生えるのはなぜだろう。
加賀も被害者も新参者だった。でも、彼らを暖かく迎えてくれた街。
暗い殺人事件と同時並行の人情物語。
短編集でありながらも、最後は紡がれる。
殺人事件なのにどうも心が温まってしまう一冊。
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