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【書評】読むだけですっきりわかる日本地理-後藤 武士

書評

読むだけですっきりわかる日本地理 (宝島SUGOI文庫)

著者:後藤 武士

出版社:宝島社( 2009-06-05 )

価格:¥ 480

文庫 ( 253 ページ )

ISBN-10 : 4796670602

ISBN-13 : 9784796670609




日本の歴史に続き、日本地理も読んでみた。

思い出のある地域・場所が多ければ多いほど、地理の知識は増える。これは確実に比例する。大人になれば行動範囲は広がり、そこで暮らしたり、そこへ旅行へ行ったり、出張で行ったりと知る場所は多くなる。しかしだ、その地域の歴史や気候、地場産業など、特産物以外の知識は簡単には手に入らない。

どうも、おいしい食べ物か観光スポットだけしか頭に残っていない。

そんなとき、電車の中で読めるだろうと買っておいた本書をついに読み終えた。

目立ってエッジの効いたものではないが、俯瞰的に日本全体の地理が分かるといえる。

気候・地名・農業・工業・水産業・交通など、ポケットサイズの教科書代わりにはなった。
日本の地理について、住んでいる、あるいは住んでいた都道府県ですら何も知らな過ぎだということがよくわかった。

章立ては、北海道から九州・沖縄までの地域とそれぞれの都道府県の特徴が半ば口語調で語られる。
視点は、どちらかというと高校生の受験用か。暗記の仕方などが随所に表れる。
しかし、雑学と学術といえば、完全に雑学の部類に入るだろうが、大人でも十分楽しめるし、自分の浅い知識がよく分かる。
あぁ懐かしい、あぁこれ習った、が何度も出てくる。

地理が好きでも嫌いでも、読んで損はない。


色褪せることのない地理の知識、かばんに潜ませていつか読めばいい一冊。

【書評】読むだけですっきりわかる日本史 -後藤武士

書評

読むだけですっきりわかる日本史 (宝島社文庫)

著者:後藤 武士

出版社:宝島社( 2008-06-03 )

価格:¥ 500

文庫 ( 348 ページ )

ISBN-10 : 4796663991

ISBN-13 : 9784796663991




つい先日、タレントのラサール石井が今年のセンター試験を受験したとテレビで言っていた。
また、自分の生後の時代が日本史に出題されていて、その問題は無事に解けたと同時に自分の生きている時代が既に日本の歴史になっているのを複雑な気持ちで語っていた。

例えば、これから100年後の日本史の授業で2000年代はどんな事が教えられるのだろうかと考えた。

政治的な話題としては、小泉首相の小泉ブームに始まり、2009年の民主党による非自民政権の誕生あたりでしょうか。郵政民営化も政治的な話題でしょう。地方分権の立役者として、宮崎県知事や大阪県知事の活躍も無視できない。

経済的な話題としては、IT革命とITバブルはこの時代に記述されるだろうし、米国から端を発した金融危機も2010年代へ渡っての不況・デフレのトレンドとして歴史に刻まれる。
経済的側面は、国内だけのトピックスでは完結できない時代として位置づけられるだろう。

それ以外だと、おれおれ詐欺やら格差社会やらニートやら、社会問題に焦点があたるだろうか。

日本史ではないが、海外では黒人大統領の誕生や、911テロは歴史に残るでしょう。
中国がWTOに加盟したり、ユーロの流通も2000年代だった。

日本史に刻まれる事柄は、100年前と比べたら大きく違うはずだ。
何よりも、日々蓄積される情報の量があまりにも違う。情報革命というIT化は歴史も変える力を持っている。

例えば100年以上も前の日本で起きた政治、経済、文化的側面は保存された文献から紐解く。その文献の量は時代に比例して増える。歴史の研究はより精度を増す。楽しみだ。

さて、前置きが長すぎたが、本書は「読むだけですっきり分かる日本史」だ。

文庫本一冊で、1000年以上の歴史を記述するわけだから、大雑把ではある。しかし日本の大きな流れは十分分かる。
決して年表の説明だけではなく、事柄と事柄の必然性や因果関係などは丁寧であるため、大きなトレンドが分かり、暗記科目といわれる日本史が、面白く勉強できる。

幕末の英雄達は、やはりかっこよく映っているが、戦後の日本でそれほどカリスマ性を持ち小説化されるほどの人物がいただろうか。いや、むしろ出ないのではないかと思う。

つまり、当時は情報が限られていたためにヒーローはヒーローでいられたはずだ。しかし現代では個人の多様性が叫ばれ、情報伝達にコストもかからない時代だ。政治不信に陥っている今、絶対的な政治的英雄が生まれる余地はない。

しいていうなら、小泉元首相くらいか?

また、日本の歴史は天皇を中心としてきたため、当然天皇の記述は多い。
戦後からは国民主体となり経済が中心の社会である。天皇の記述や政治的記述はさほど多くは占めないだろう。

何が歴史として残っていくのか、これからの日本史の教科書が楽しみだ。


なにはともあれ、日本史を学んで損する人はいない。一度頭を整理するための一冊。

【書評】カッコウの卵は誰のもの-東野圭吾

書評

カッコウの卵は誰のもの

著者:東野 圭吾

出版社:光文社( 2010-01-20 )

価格:¥ 1,680

単行本 ( 357 ページ )

ISBN-10 : 4334926940

ISBN-13 : 9784334926946




量産作家の東野圭吾氏の2010年初の単行本。
北海道や新潟のスキー場及びその周辺を舞台とし、スキー選手の親子を中心とした3家族による殺人犯探しのサスペンス。親子の絆とは何だろう、考えさせられる。捕らわれてはいけないと。

スキーの元日本代表・緋田には娘・風美がおり同じくスキーでオリンピックを目指す。当然血のつながった親子なら、運動能力の高さは継承するのではないか?という着眼から、遺伝子レベルからスターを発掘しようという遺伝子研究を行う研究所がその親子に近づく。しかし、緋田の妻は風美が2歳になる前に自殺しており、しかも流産していた。では、風美は誰の子なのだ?

そんなとき、風美の父親であろう人間が緋田にアプローチをしかける。その意図は分からない。娘を取り戻すためなのか。あるいは・・。

父親と娘の絆には、血のつながりに勝るとも劣らない愛情が溢れている。カッコウは託卵という習慣があり、カッコウの卵は誰のものというタイトルから血のつながっていない親子の物語であるのは容易に想像がつく。
しかし、著者はそのような想像は折込ずみで展開する。本当の親は誰なんだ?という疑問ばかりに集中してしまったが、実はそれは著者の意図だ。本当の親を探しているうちに、伏線は縦横無尽に張り巡らされていた。

気づけば、最後の意外な終着点。

親が子を思うこと、子が親を思うこと。そして何をしてあげることが幸せなのか。
3つの親子のそれぞれの結末は、意外であり、そして感動である。

親子は「血」によってのみ決まるという半ば当たり前のことに捕らわれると、視野はあまりにも狭いことに気づかされる。

いつか娘が生まれたら、もう一度読みたい親子愛が溢れる一冊。

【書評】F1ビジネス―もう一つの自動車戦争-田中 詔一

書評

F1ビジネス―もう一つの自動車戦争 (角川oneテーマ21)

著者:田中 詔一

出版社:角川書店( 2006-05 )

価格:¥ 780

新書 ( 220 ページ )

ISBN-10 : 4047100455

ISBN-13 : 9784047100459




    時速ゼロから100キロの加速に要する時間は、たった2.5秒
    時速200キロから1.9秒後には、完全に停止できる
    F1ドライバーは、1レース平均2600回のギアチェンジを行う
    ドライバーのコックピットの温度は平均50度

これがF1の世界のごく一部である。ただの車の競争とは違う。尋常ではない非常識な性能を持つ車の戦いであり、スポーツという名のもとに巣食う巨大ビジネスである。

さて、F1の帝王ミハエル・シューマッハ。彼が乗ればどんなF1カーでも優勝できるのか?F1を知るものなら一度は思ったことだ。
しかしF1の速さを決定する要因は、
  • タイヤ30%
  • 車体30%
  • エンジン20%
  • ドライバー20%


なのである。それに加えて、それを効率的に組み合わせるマネジメント力がチームとして必要なのだ。
そのチームは約100人体制のプロ集団であり、グランプリ開催中、世界中を渡り歩いている。そして幹部に至っては、ドライバーと同等ともいえる報酬を得ているという。花形ドライバーへの報酬以外へも相当なお金が動く世界、それがF1だ。1秒のタイムを縮めるのに、100億かける世界がF1なのだ。100億かけてでも縮めたい、そんなエンジニアの技術的興味に加え、1秒を縮めることによって得られるリターンがそれを上回るのだ。

F1という世界が巨大産業へとなったのが、F1の帝王バーニー・エクレストンの存在だ。F1を商業化に成功したのは彼の功績によるところが大きい。F1を初めてテレビの放映権の対象とし、世界各国のサーキット間でF1開催権を競わせ、ゲームソフトのライセンス料やサーキット内の看板広告を販売し、各チームのレースごとの機材運搬を組織化、スタッフの移動の手配をするトラベルエージェントなど、F1のすべてのお金の動きが彼の管理下にある。

スポーツと呼ぶことに異論はないが、その割には競技人口があまりにも少なくないか?と思う。
これほど競技者と観戦者の絶対数に開きのあるスポーツも珍しい。

やれもしない競技になぜ熱狂するのか?
速い車を作って、速い車を走らせる。この簡単な競技の裏には、個人ではなく企業間競争の色合いが強い。
この企業同士の戦いにこそF1の真髄がある。

本書では、F1チームの遠征費用の裏話やフェラーリの裏切り行為、チーム名の付け方などF1に直接携わってきた人間にしか分からない鋭い洞察があふれている。
何度もF1番組を見るより、この本を読んだほうがはるかにF1を知ることができる。

ジェンソンバトンのかっこいい笑顔、その裏にある企業の熾烈な戦いを垣間見ることができる一冊。

【書評】OUT(上・下)-桐野 夏生

書評

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)

著者:桐野 夏生

出版社:講談社( 2002-06-14 )

価格:¥ 700

文庫 ( 456 ページ )

ISBN-10 : 4062734478

ISBN-13 : 9784062734479



書評

OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)

著者:桐野 夏生

出版社:講談社( 2002-06-14 )

価格:¥ 650

文庫 ( 352 ページ )

ISBN-10 : 4062734486

ISBN-13 : 9784062734486




1998年度版 このミス 1位
1997文春ベスト10 2位
文春二十世紀傑作ミステリーベスト10 国内部門 18位
日本推理作家協会賞
エドガー賞最優秀長編賞にノミネート

10年前に登場した本書は、今なお色褪せることなく犯罪小説の金字塔と言えるのではないか。作者の代表作となった本書は、どこにでもいる主婦達が引き起こす不可解な殺人事件とその凄惨な事後処理の物語だ。

主婦が旦那を殺し、その旦那を解体するパート仲間の主婦達。彼女達は環境は違えど閉塞感という感情のもとに集まっている。彼女達は、金の亡者と化し解体を生業としてはじめた。そんな中、旦那殺害の容疑をかけられた賭博場・バーのオーナーが真犯人探しへと動き出す。動機は単純、復讐だ。そこから真犯人主婦、パート仲間の解体ビジネス、追いかけるバーオーナー達の複雑な数日間が始まる。

読み出したらとまらない、いや斜め読みして飛ばしてしまいたいくらいの衝撃を受ける。
主人公達は、どこにでもいる主婦だ。そしてどこにでもある夫婦間の感情から妻が夫を殺すという殺人事件が起こる。
そこから犯人探しが始まるわけでも、動機探しが始まるわけでもなく、主婦仲間による死体解体が仲間の家の風呂場で始まるのだった。

なぜ?なぜ他人の旦那の死体を解剖するのか?
金なのか、仲間意識なのか、90年代後半の日本の閉塞感は作品にも如実に表れており、まさにその閉塞感からの脱却が彼女達を死体解体マシーンへと変身させたのだ。

それにしても、一貫してダーク。それ以外の色はない。どんな物が登場しようとも、作品に流れる色はダーク。

閉塞感、憎しみ、妬み、堕落、疲労感、全てが交じり合って限りなく黒に近いダーク。


心の醜さ、そして現実から逃げたくて逃げたくて、もがき苦しむ人間の姿はきっとこうなんだろうと思える。

彼女達が自ら望んだ行動なんて、どこにも無いのではないだろうか。姑の介護に疲れきり、娘にはタンス預金を奪われたパート仲間に師匠と呼ばれる主婦、旦那とは完全マンネリ化し、息子は引きこもりの元信金OL主婦、見栄っ張りで車や洋服のために借金に借金を重ねる自転車操業の主婦、みんな最初は良かった。いつからか、人生の歯車がおかしくなっている。しかも自分だけのせいじゃないと、そう思ってる。だから、人を殺しても、人を解体しても、前を向ける。太陽の下に生きていられる。

きっと今、同じ題材にしても出てくる主婦の閉塞感や挫折感は同じなんだろうなと思う。

人間が本質的に、そこに落ちるとき、こうなるんだなと思う。

これを読んで、すっきりすることなんて何ひとつない。

完全に闇だが、彼女・彼らの行動を完全に否定できないと思ってしまう一冊。


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