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【書評】OUT(上・下)-桐野 夏生

書評

OUT 上 講談社文庫 き 32-3

著者:桐野 夏生

出版社:講談社( 2002-06-14 )

価格:¥ 700

文庫 ( 456 ページ )

ISBN-10 : 4062734478

ISBN-13 : 9784062734479



書評

OUT 下 講談社文庫 き 32-4

著者:桐野 夏生

出版社:講談社( 2002-06-14 )

価格:¥ 650

文庫 ( 352 ページ )

ISBN-10 : 4062734486

ISBN-13 : 9784062734486




1998年度版 このミス 1位
1997文春ベスト10 2位
文春二十世紀傑作ミステリーベスト10 国内部門 18位
日本推理作家協会賞
エドガー賞最優秀長編賞にノミネート

10年前に登場した本書は、今なお色褪せることなく犯罪小説の金字塔と言えるのではないか。作者の代表作となった本書は、どこにでもいる主婦達が引き起こす不可解な殺人事件とその凄惨な事後処理の物語だ。

主婦が旦那を殺し、その旦那を解体するパート仲間の主婦達。彼女達は環境は違えど閉塞感という感情のもとに集まっている。彼女達は、金の亡者と化し解体を生業としてはじめた。そんな中、旦那殺害の容疑をかけられた賭博場・バーのオーナーが真犯人探しへと動き出す。動機は単純、復讐だ。そこから真犯人主婦、パート仲間の解体ビジネス、追いかけるバーオーナー達の複雑な数日間が始まる。

読み出したらとまらない、いや斜め読みして飛ばしてしまいたいくらいの衝撃を受ける。
主人公達は、どこにでもいる主婦だ。そしてどこにでもある夫婦間の感情から妻が夫を殺すという殺人事件が起こる。
そこから犯人探しが始まるわけでも、動機探しが始まるわけでもなく、主婦仲間による死体解体が仲間の家の風呂場で始まるのだった。

なぜ?なぜ他人の旦那の死体を解剖するのか?
金なのか、仲間意識なのか、90年代後半の日本の閉塞感は作品にも如実に表れており、まさにその閉塞感からの脱却が彼女達を死体解体マシーンへと変身させたのだ。

それにしても、一貫してダーク。それ以外の色はない。どんな物が登場しようとも、作品に流れる色はダーク。

閉塞感、憎しみ、妬み、堕落、疲労感、全てが交じり合って限りなく黒に近いダーク。


心の醜さ、そして現実から逃げたくて逃げたくて、もがき苦しむ人間の姿はきっとこうなんだろうと思える。

彼女達が自ら望んだ行動なんて、どこにも無いのではないだろうか。姑の介護に疲れきり、娘にはタンス預金を奪われたパート仲間に師匠と呼ばれる主婦、旦那とは完全マンネリ化し、息子は引きこもりの元信金OL主婦、見栄っ張りで車や洋服のために借金に借金を重ねる自転車操業の主婦、みんな最初は良かった。いつからか、人生の歯車がおかしくなっている。しかも自分だけのせいじゃないと、そう思ってる。だから、人を殺しても、人を解体しても、前を向ける。太陽の下に生きていられる。

きっと今、同じ題材にしても出てくる主婦の閉塞感や挫折感は同じなんだろうなと思う。

人間が本質的に、そこに落ちるとき、こうなるんだなと思う。

これを読んで、すっきりすることなんて何ひとつない。

完全に闇だが、彼女・彼らの行動を完全に否定できないと思ってしまう一冊。


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