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【書評】プリズン・トリック-遠藤 武文

書評

プリズン・トリック

著者:遠藤 武文

出版社:講談社( 2009-08-07 )

価格:¥ 1,680

単行本 ( 328 ページ )

ISBN-10 : 4062157063

ISBN-13 : 9784062157063




第55回江戸川乱歩賞受賞作、原題は『39条の過失』である。

交通事故による刑事事件の厳罰化という今日のトピックスを取り上げており、また刑務所での完全密室殺人という限りなく不可能な挑戦にチャレンジしている点は高評価。

ただ減点せざるを得ないのが、作品の構成である。
まず、視点の移動があまりにも多く無駄な登場人物にもスポットが当たりすぎている。誰が主人公で、誰が脇役なのかがわからないまま最後を迎えてしまう。

刑務所内という一般人の知らない世界を描いているということで、描写は丁寧であるがそれでもどうも舞台がイメージしづらい。

それでも江戸川乱歩賞受賞作として君臨したのは、著者のデビュー作にしてここまで大きなテーマに取り組んだという気骨のある著作だからだろう。

原題の39条とは日本国憲法39条を指し、一事不再理についての規定であり、本書の大きなテーマでもある。

交通事故の被害者と加害者、そして加害者の親族が登場するのだが、加害者の遺族が加害者と絶縁する。その理由を知ったときは鳥肌が立つほどの鮮烈である。

全体を通じて、粗さが目立ち何度も立ち往生してしまいそうになるが、ここはひとつ最後まで読み通してもらいたい。
なぜ江戸川乱歩賞の選考委員がこの作品を選んだのか、うっすらと分かる気がする作品である。

「志の高さ」が文字に滲み出るような、男らしい一冊。

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