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【書評】新参者-東野圭吾

書評

新参者

著者:東野 圭吾

出版社:講談社( 2009-09-18 )

価格:¥ 1,680

単行本 ( 354 ページ )

ISBN-10 : 4062157713

ISBN-13 : 9784062157711




『卒業』『悪意』『赤い指』等に登場する加賀恭一郎警部補の鋭い洞察力が冴え渡る東野圭吾著、加賀シリーズの最新作だ。

本書は、ひとつの事件を複数の関係者の視点で取り上げた短編集だ。

初出は『小説現代』2004年8月号に始まり、2009年7月号まで続いている。丸5年かかっている。中には1年のブランクもある期間もある。それでも物語が読まれ続けていたのは1話の完成度の高さの表れだろう。

日本橋・人形町・浜町といった都内でも下町情緒溢れる街を舞台とした殺人事件。真犯人を探すことが目的であるが、そんなことはどうでもいいと思わせてしまうような人間味溢れる関係者達のエピソード。
嫁姑問題を抱える家族、溝を埋めたい夫婦のとった悪戯、祖母の真相を知る家族ともう一人の他人、新参者の加賀恭一郎がそんな人間模様を炙り出してくれる。まるで殺人事件とは別物語なのだと錯覚してしまう。

だが、それは伏線であった。最後にはやはり殺人事件の謎解きが始まるのが著者らしい。

著者が描きたかったのは、「人情」ではないだろうか。ひとつの殺人事件という殺伐とした事実は、スタンドアローンで起きているわけではない。その被害者、加害者、関係者がいる。その彼らには小さくても人情味溢れる物語があり、それが線となり最後には繋がっている。

各話にはそれぞれ新たな登場人物がおり出来事も違うため、なかなか感情移入する余地はない。しかし各話を読み終えたあと、その登場人物が誰であろうと関係のない新鮮で心地よい感情が芽生えるのはなぜだろう。

加賀も被害者も新参者だった。でも、彼らを暖かく迎えてくれた街。
暗い殺人事件と同時並行の人情物語。

短編集でありながらも、最後は紡がれる。
殺人事件なのにどうも心が温まってしまう一冊。




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